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『縄文うるしパーク』の挑戦!

■縄文の里 蓮田

最近靜かなブームとなっている「縄文」。

そう、縄文土器や土偶に象徴される、紀元前に1万年以上続いた時代と文化です。


漆が縄文時代から使われていることをご存じでしょうか。

漆掻き、漆の精製、顔料の使い方など、現代の漆技術の礎はすでにこのころに築かれていたことが、多くの出土品の研究からわかっています。


だからでしょうか。漆好きのひとには縄文好きが多いのです。



埼玉県蓮田(はすだ)市在住の漆作家、加藤那美子さんもその一人。

縄文好きを超えて、かなりの縄文ツウ。


今は海なし県の埼玉ですが、縄文時代は温暖だったため海岸線がこの辺りまで来ていました。国指定史跡の「黒浜貝塚」をはじめとする縄文遺跡や貝塚がいくつも残っています。


■蓮田でウルシ植栽活動スタート


自らの作品に国産漆を用いるため、減少の一途をたどる日本の漆の現状に強い危機感を抱いていた那美子さんは、2019年、地元の蓮田で、自らウルシの植栽活動を立ち上げました。



小さなウルシの苗木と加藤那美子さん



地元地域とのネットワーク作り、他地域の植栽活動からの情報収集など努力の甲斐あって、JR蓮田駅から車で5分ほどの約500坪という広い土地で、2019年春、ウルシの植栽をスタートできることになりました。


FEEL Jも、計画当初から参加協力しています。



■"耕作放棄地"の現実


そこは、長年、耕作放棄地となっていたところでした。

もはや耕作放棄地ではなく、荒廃農地と言うべきかもしれません。



つまり、荒地・・・。


夏には背丈を優に超える雑草が生い茂ります。


那美子さん、背丈で完全に負けてます・・・


雑草は、冬は枯草となって積みあがります。



土のなかは太い葛の根っこが四方八方にはびこっていて、スコップやシャベルでは全く太刀打ちできないほどです。


引っ張ってもびくともしません。ゴボウみたいです。



ゴボウより太いですね。。。


根っこだけではなくて、何年も前に投棄されたと思われる石まじりの土砂が埋まっているところもありました。


これが、全国で深刻な問題となっている耕作放棄地の実態なのだと体感しました。

幸い蓮田地域にはイノシシやシカといった獣害がないだけまだ良いのかもしれません。




■とにかくやってみる


この場所で育つのか、葛の根に負けずにウルシが根を張ることができるのか、害虫はつかないのか、土に養分はあるのか、水はけはどうなのか、考えたらきりがないほど不安や疑問だらけですが、とにかくやってみないとわからない。


植えてみよう!


ボランティアが集まりました。

敷地は500坪と広大ですが、まずは30本ほど植える場所の開墾からスタートです。


果てしなき道のりと思われた草刈りと開墾も。。




皆で力を合わせれば開けます。




葛の根や蔓との戦いに、自然の力強さと厳しさを身をもって実感しましたが、一方で、これを乗り越えれば日本各地が課題として掲げる耕作放棄地の利活用につながり、漆の増産にも貢献できるのではと思います。



■『縄文うるしパーク』プロジェクト始動!


2019年4月27日、東京・千葉・埼玉から11名の有志が集まり、

壮烈な草刈りの後、ついに約30本の苗木を植えました。



そして、この日の参加者の会話の中で、


この植栽地と取り組みは、『縄文うるしパーク』と命名されました。

(僭越ながら、ウルシスト🄬千晶が名付け親です。。)


漆掻きができるまで約15年。気候変動も激しい昨今、植栽のノウハウも不十分ななか、無事に育つかどうかは未知数です。試行錯誤しながら失敗も含めてノウハウを蓄積していくことも、「縄文うるしパーク」の使命かもしれません。


実際、当初植えた苗の一部が枯れてしまったり、枯れたと思っていた苗が復活したり、という出来事もありました。ありがたいことに、近所のに園芸のプロの方が植え方を指南してくださいました。


2年目の2020年春には、新型コロナ感染症という思いもよらぬ状況に見舞われました。ボランティアが集まれなくなり、用意した苗約20本を植える場所の耕作と植栽、その後の草刈りを那美子さんとご家族だけに頼るという不測の事態も発生しましたが、「縄文うるしパーク」は確実に進化を遂げています。


初年度に植えたウルシ苗は人の背丈を超えて2m強に成長しました。



といっても順調なことばかりではなく、アブラムシやアリが大発生したり、花が咲いたと思ったらすぐに落ちてしまったり。成長度合も苗木によって差が激しいです。要因が土なのか、病気なのか、日当たりなのか、継続的に観察中。


2020年春に植えた苗木は、長梅雨と酷暑の夏を乗り越え、元気です。



また、ボランティア仲間が発芽させた苗も想像以上に立派に育っていて、

来年は他所から苗木を買う必要はなさそうです。


■活動継続のカギ


結構大変なことも多い植栽活動で、「縄文うるしパーク」には活動継続の秘訣があります。


それは「楽しむ」こと!



那美子さんの人柄ですね!



草刈りなど、かなりハードではあるのですが、みんなでやるとなんだか楽しくてたまらないのです。


時にはBBQしたり


那美子さんの漆器でお弁当食べたり。



お昼を食べながらこんな会話も。


「ウルシ以外にも縄文にゆかりのある木や植物も植えてみようかな」

「草刈りの後のお昼ごはんに食べられるトマトも植えとく?」

「お隣さんにいただいた菊芋を植えてみたー」


気づけば、最近はブルーベリーやミカンの木も植わっています(笑)。

敷地の縁に、縄文にゆかりのある植物のニワトコやカラムシも見つけました。



近くには縄文史料に触れられる「蓮田市文化財展示館」もあります。


那美子さんのガイドで蓮田の縄文文化を学び



縄文コスプレ?してみたり(笑)。


「楽しい」は継続の力なり!



■「漆の木を植える菜箸」


もうひとつ、活動を支えているのが「漆の木を植える菜箸」。

URUSHI PICNICのオンラインショップでも販売しています。


能登ヒバ材に国産漆で拭き漆をして作っています。

この売上は、「縄文うるしパーク」の農機具や肥料、草刈り機の燃料などの活動経費に活用しています。


実はこのお箸、かわいくて使いやすいとリピーター続出中。

漆には抗菌性があり、熱にも強くて安心です。

また、木材はもちろんのこと、漆は紫外線で分解されますので、いずれ土に還ることができる素材なのです。

暮らしにも環境にも優しい菜箸。


ぜひお試しください。そして、この活動を応援していただけたら嬉しいです。


URUSHI PICNIC オンラインショップ「漆の木を植える菜箸



■挑戦は続きます!


なるべく過度な農薬などに頼らずに育てたいと、皆で勉強中。


「先日、土のpH値を計ってみました」

「薬品を使わずにアブラムシ退治するには何がいいだろう

「また葉っぱの様子がおかしい。何の病気かなぁ」



心配もハプニングもつきませんが、だからこそ小さな成長がとても嬉しい。



那美子さんの呼びかけに、有志が集まって始まった取り組みを、これからも、ときには失敗も乗り越え楽しみながら、日本各地の取り組みとも情報交換しつつ、ウルシの木もこの活動も、皆で育てていきたいと思います。



植栽地はJR蓮田駅から車で5分、徒歩でも20分ほどのところ。近県や都心からも十分日帰り可能です。



漆の木を植える菜箸」からの応援も、どうぞよろしくお願いします!



『縄文うるしパーク』のチャレンジは、これからもまだまだ続きます。




「縄文うるしパーク」インスタグラム



加藤那美子さんのホームページ

「うるし劇場」https://urushinamiko.jimdo.com/

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