ウルシの木の活用プロジェクト
未活用のウルシの木に新たな価値を生み出す取り組み

2020年、FEEL J株式会社は「ウルシの木の活用プロジェクト」を始動しました。
[ウルシの木、中はきれいな黄色]

漆塗りに使われる「漆」は、ウルシという樹木から採れる樹液です。
漆掻き職人は、樹齢15年ほどのウルシの木に傷を付け、そこから出てくる樹液を採取します。
漆掻き後、その木は伐採します。根を伝って新たに芽を出す蘖(ひこばえ)がよく育つように促すためです。
これまで、この伐採後の木は活用されていませんでした。
「ウルシの木の活用プロジェクト」は、この伐採された木に新たな価値を見出して、日本の漆産業をサポートしようという取り組みです。
漆とウルシの木を取り巻く現状
(1)漆が足りない!
現在、日本で使われている漆は残念ながら95%以上は輸入に頼る状況にあります。
しかし一方で、近年、重要文化財の修復用などを中心に国産漆の需要は急増しています。

需給バランスがひっ迫するなか、全国でウルシの木を植える活動が始まりました。
しかし、苗を植えてから漆掻きができるまで育てるには約15年。
年数がかかるだけではなく、実はウルシの木の栽培はとても手間がかかります。
適度な日当たり、水はけを維持し、施肥や下草刈りも必要です。このような費用や作業は、多くの場合、ボランティアの善意によって支えられています。
(2)見えてきた課題
これまで、漆掻き職人の後継者不足も大きな問題でした。

現在、漆産地では、若手の漆掻き職人の育成に取り組んでいます。
しかし、木が無ければ職人たちは仕事ができません。もともと漆掻きは主に夏から秋にかけての仕事のため、漆掻きだけで生計を成り立たせるのは難しく、現状、多くの漆掻き職人たちは、ほかの冬場の仕事と兼業しています。以前、冬場は酒造りの蔵人として働く職人さんを取材しました。また、リタイア後にシニア就業をしているケースも珍しくありません。
まずは漆の生産性を上げて、漆掻き職人と、木を育てる人々の収益性を上げていく必要があります。
解決すべき課題が見えてきました。
・ウルシ植栽活動と漆掻き職人の収益向上
・長い植栽期間の担い手増加
「ウルシの木の活用プロジェクト」始動!
2020年春、「ウルシの木の活用プロジェクト」が始動しました。
漆掻き後の木は多くの場合伐採されて、次の蘖(ひこばえ)の成長を促します。そして、伐採された木はそのまま使われることなく廃材となっていました。
私たちはこの伐採木に着目しました。これを活用して収益を生む方法があれば、漆掻き職人や植栽関係者の収益を上げることができます。
ウルシの木材としての課題を克服し、魅力を活かした商品を開発して収益を植栽活動に還元するのが「ウルシの木の活用プロジェクト」です。
私たちはこのプロジェクトを産学協働で、以下の目標を掲げて取り組んでいます。
①ウルシの伐採木をリサイクルして収益化
未活用のウルシの木を商品化=収益化して、漆掻きやウルシの木の植栽に従事する方たちの収入源をサポートすることを目標としています。
②支援の輪を広げ、木と漆の文化を未来へ
商品を作る過程を幅広い分野の方々と取り組むことによって、漆文化とウルシの木への理解や地域交流を広め、漆産業を次世代に続く持続可能な産業として育てていきます。
個性のある木材
木を使った商品は身の回りにたくさんあります。ウルシの木の商品化も比較的簡単なように思われるのですが、実はなかなか一筋縄ではいきません。
ウルシの木材はほとんど流通していません。
●樹齢15年ほどで細く不揃い。一般的な木材の規格に合わない。
●水分が多く乾燥が難しい。
●漆(樹液)が乾いていないとかぶれる可能性があり、製材・木工業者が敬遠する
●そもそも木が少ない
一方で、魅力もあります。
●かぶれるのは樹皮近くのみ。なかの心材部分はかぶれない
●軽くて加工しやすいやわらかな木質とその風合い
●優しい黄色で、草木染めの一種「ウルシ染め」の染料になる
●抗菌効果がある
異分野協働、産学協働の取組をスタートしました
FEEL J㈱は日頃より、漆文化と異分野を繋ぎ、新たな価値や交流を生み出すことをモットーとしています。本プロジェクトにおいても同様です。投げかけに応えて、多方面の企業・大学・研究機関・個人の方からご関心をお寄せいただきました。
そしていま、実際にいくつかの取り組みが進行中です。

まずは産学協働の取り組み。学生も参加して、自由な発想で商品開発に取り組んでいます。
特に、拓殖大学 工学部 デザイン学科 永見豊准教授の研究室では、毎年ゼミの学生が、ウルシの木の特性把握と商品デザインに挑戦しています。

産業能率大学 経営学部 番田清美准教授のゼミでは、ウルシの木を活用した商品アイデアとそのマーケティングを国内外で実施しました。

2020年10月には、両大学と日本最大の漆産地である岩手県で活動する一般社団法人次世代漆協会 他の企業団体をオンラインでつないで合同ミーティングを開催しました。

また、新潟のワイナリー「フェルミエ」と、FEEL Jが運営するワインのための漆器ブランド「アール・ド・テロワール」によるワインと漆器の限定セットの中に、ウルシの木のチャームがついた専用ポーチが採用されました。
ポーチの生地は新潟の伝統工芸「亀田縞」、チャームにはウルシの木が使われています。
自然の植物が持つ力を尊重しながらワインを醸す「フェルミエ」さんは、ウルシの木にも温かい関心を寄せてくださり、この企画が実現しました。

2021年、2023年には、この取り組みをより多くの方に知っていただくために、クラウドファンディングを実施。

多くのご支援をいただきました。ありがとうございました。
2021年の活動については 「ウルシの木の活用プロジェクト」2021 もぜひご覧ください。
協働にご興味のある大学・企業・団体の皆様からのご提案・お問い合わせも承っています。
<本プロジェクトに関するお問い合わせ先>
Email: [email protected]
「ウルシの木の活用プロジェクト」主宰 加藤千晶

